2015/03/02

平成27年2月28日の徳島新聞「がん何でもQ&A」に口腔管理センター山村特任助教が掲載されました。

平成27年2月28日の徳島新聞「がん何でもQ&A」に口腔管理センター山村特任助教が掲載されました。

~徳島大学病院 口腔管理センター 特任助教   山村佳子

がん何でもQ&A

Q:
60歳の女性です。現在、抗がん剤による治療を受けていますが、口の中に発赤や潰瘍ができて、痛みがあり、自分でケアが十分に行えません。どのように行えばよいのか、教えてください。

A:
抗がん剤による治療によって、悪い細胞だけでなく正常な細胞もダメージを受けるため、口の中の粘膜(舌・歯ぐき・唇や頬の粘膜)に発赤や痛み、潰瘍が出現することがあります(口腔粘膜炎)。固形がんに対して抗がん剤を使用した場合は25~55%の確率で出現するといわれています。また、唾を作る細胞がダメージを受けた際には、唾の量が減ったり、ネバついて、口の中が渇いた状態になります(口腔乾燥)。抗がん剤による副作用は、個人差はありますが、抗がん剤投与後5日目頃から出現し、10~12日目頃にピークを迎えます。抗がん剤の多剤併用の場合、投与期間が長い場合などは、口の中の症状が出やすくなり、重篤になりやすい傾向があります。
このような抗がん剤による副作用を予防・軽減させるためには、口の中を清潔に保つことが重要です。体調不良や口の中の痛みにより自分自身でケアが十分に行えずに、細菌や汚れが停滞していると、口の中は感染しやすい環境になり、口腔粘膜炎の症状を悪化させることが予想されます。そのため、抗がん剤による治療前から口の中の環境を整えることは非常に大切であることが分かります。
まず、痛みが強い場合などは、唇や粘膜に保湿剤や局所麻酔薬入りの軟膏を塗布したり、局所麻酔薬入りのうがい薬でうがいしてから、鉛筆を持つように歯ブラシを握って、歯面を1本ずつ丁寧に汚れを除去します。粘膜に歯ブラシが当たると痛いので、ヘッド部分が小さく、毛先の柔らかいものを使い、歯ブラシで磨きにくい場合には、タフトブラシ(図)の使用をおすすめします。歯磨剤は、必ずしも使う必要はありませんが、使う場合には刺激の少ないものを選んだり、自分自身でケアが十分にできない場合は、むし歯ができやすいためフッ素が添加されているものがおすすめです。白血球数や血小板数が低下している場合などは、歯ぐきや粘膜から出血させないように、また傷をつくらないように、歯と歯ぐきの間のブラッシングや粘膜のケア時は注意しましょう。次に、保湿により口腔粘膜炎の症状を軽減させることができますので、うがいや水分補給、保湿に努めるように心がけてください。
口腔粘膜炎が出現すると、口から食事を摂取することが難しくなることがありますが、工夫することで改善できることもあります。例えば、塩味や香辛料などの刺激物により痛みが増強されることがあります。刺激物をさけ、室温程度に冷まして、小さく柔らかく口当たりをよくしたものを摂取するようにしましょう。また、ぱさつきのある食品はとろみをつけるなどすると、飲み込みやすく食べやすくなります。
3月10日14時~16時に徳島大学病院日亜メディカルホールにて、『がん患者教室』が開催されます。抗がん剤治療とお口のケアについて講演および実技などを予定しておりますので、お口のケアについて不安やご相談をお持ちの方は是非ご参加下さい。いくつかのグル―プに分かれて、歯科医師または歯科衛生士によるブラッシング指導を予定しております。きめ細やかな説明を心がけておりますので、多数のご参加をお待ちしております。
*『がん患者教室』についてのお申込み・お問い合わせは、徳島大学病院がん診療連携センター  088-633-7312までお願いします。



セルフケアのポイント
① 唇や粘膜に保湿剤や局所麻酔薬入りの軟膏を塗布、または局所麻酔薬入りの
含嗽剤でのうがい後にブラッシングを行う。
② 鉛筆を持つように歯ブラシを握って、歯面を1本ずつ丁寧に汚れを除去する
③ ヘッド部分が小さく、毛先の柔らかいものを使い、歯ブラシで磨きにくい場
合には、タフトブラシを使用する。
④ 歯磨剤は、刺激の少ないものやフッ素が添加されているものを使用する。
⑤ 歯ぐきや粘膜から出血させないように、また傷をつくらないように、歯と歯
ぐきの間のブラッシングや粘膜のケア時は注意する。
⑥ うがいや水分補給、保湿に努めるように心がける。