精巣腫瘍

1. はじめに

精巣腫瘍の好発年齢は、0~10歳、20~40歳、60歳以上の3峰性ですが、特に25歳~40歳と働き盛りの男性に好発する悪性腫瘍です。
この疾患は進行の早い悪性腫瘍であるため、初診時よりすでにリンパ節や他の臓器に転移している例も少なくありませんが、最近は抗がん剤の進歩により、進行している場合の治療成績も着実に進歩しています。

症状としては、患側の精巣が腫大してきたことを自覚するというものが多く、陰嚢内容の痛みはほとんどの場合に伴いません。

診断には、まず患側の精巣を摘出し腫瘍の種類を調べます。
また腫瘍の進行度合い:病期分類診断を行います。
具体的にはリンパ節、肝臓、肺などに転移があるかないかをCTなどで行います。
また、採血により腫瘍マーカー(AFPやHCG-β)を測定いたします。
 

    2. 精巣腫瘍の種類について

    大きくはセミノーマと非セミノーマに分かれ、非セミノーマには組織成分に胎児性がん、卵黄嚢腫瘍、絨毛がん、奇形腫、多胎芽腫といわれるものが少なくとも1つ含まれています。
     

      3. 病期分類について

      Ⅰ期 ― 腫瘍が精巣、精巣上体、精索に限局し他に転移が認められないもの。

      Ⅱ期 ― 横隔膜以下のリンパ節にのみ転移が認められるもの。

      Ⅲ期 ― 横隔膜より上のリンパ節転移、遠隔転移を有するもの。
            Ⅲ期は、転移部位のひろがりによりⅢA、ⅢB、ⅢCに細分類されます。
       

        4. 治療について

        Ⅰ期 ― 高位精巣摘除術の後は、追加治療を行わず経過観察を行います。
        ただし周辺組織への転移予防のために放射線療法を行ったり、腫瘍マーカーが正常化しない場合は抗癌剤による化学療法を追加することもあります。
        一期の場合、治療成績は良好で、根治がかなりの率で期待できます。

        Ⅱ期、Ⅲ期 ― 抗癌剤による全身化学療法、放射線療法、転移した腫瘍組織の外科的切除などを組み合わせて行います。


        精巣腫瘍は抗癌剤による治療、放射線治療が有効なことが多く、多臓器に転移を有するような場合でも、的確な治療を行うことで約90%の根治が期待できる癌です。
        しかし抗がん剤や放射線の治療には、吐き気や全身倦怠感、下痢といった副作用が起こることがありますし、なかには治療に抵抗性の難治例もあります。
        より詳しいことは専門医に相談することをお勧めします。