肺癌の診断と治療

【はじめに】

 肺癌とは、気管や気管支、肺胞といった呼吸を司る臓器の細胞が正常の機能を失い、無秩序に増えることにより発生したものをいいます。他の臓器の癌(大腸癌や乳癌など)が肺に転移したものを転移性肺腫瘍といい、肺癌とは区別して考えます。
 2025年に公表された「がんの統計」によると、我が国で1年間に肺癌と診断される人はおよそ12万7千人であり、癌種別にみると大腸癌に次いで2番目に多い癌になります(図1)。一方、肺癌で亡くなった人は1年間でおよそ7万6千人と癌種別にみると第1位であり(図2)、依然として予後の悪い癌といえます。
 肺癌は小細胞肺癌と非小細胞肺癌の2つに大別され、非小細胞肺癌はさらに扁平上皮癌と非扁平上皮癌に大別されます。非扁平上皮癌はその多くを腺癌が占めますが、大細胞癌やその他の稀な組織型も存在します(図3)。小細胞癌と扁平上皮癌は、肺癌の中でも特に喫煙と関連が深いことが知られています。頻度としては腺癌が最も多く、次いで扁平上皮癌、小細胞癌の順となります(図4)。組織型によって治療方針が異なるため、後述する気管支鏡検査などにより診断に必要な量の組織を採取し、正確な診断を行うことが重要になります。
 肺癌の治療方針を決める際には、組織型の同定に加えて、癌細胞がどこまで広がっているのか(ステージ)を評価する必要があります。癌細胞が原発巣および近傍のリンパ節までにとどまる場合(I期、II期)は手術療法が、縦隔(左右の肺に挟まれた部分)のリンパ節まで広がった場合など(III期)は病状に応じて手術療法や化学放射線療法などが、反対側の肺や遠隔臓器へ病変が広がっている場合(IV期)は薬物療法が主に選択されます(図5)。
 組織型やステージに加え、近年、肺癌、特に非小細胞肺癌では、癌細胞が増殖する原因となるさまざまな遺伝子異常が明らかになっており、それぞれの遺伝子異常に応じた治療薬(分子標的治療薬)が開発されています。また、癌細胞におけるPD-L1というタンパク質の発現量は、免疫チェックポイント阻害薬の治療効果を予測するための重要な指標の一つです。そのため、薬物療法を開始する前には、採取した癌組織などを用いて遺伝子異常やPD-L1発現を調べる「分子診断」を行い、その結果に基づいて一人ひとりの患者さんに適した治療を選択することが重要です。
 実際には、組織型やステージ、分子診断結果に加え、治療を受ける患者さんの全身状態や併存症の有無などを総合的に評価し、治療方針を決定していくことになります(図6)。

    【肺癌の診断】

      <組織学的検査>

      ・気管支鏡検査
       気管支鏡検査は、肺がんの診断において非常に重要な役割を果たす内視鏡検査の一つです。この検査では、細く柔軟性のある内視鏡(気管支鏡)を、口から気道内に挿入し、疑わしい腫瘍や異常組織を採取(生検)します(図7)。採取した組織は病理検査に回され、がん細胞の有無や種類が詳しく調べられます。これにより、肺がんの確定診断が可能となります。
       検査に用いる気管支鏡には様々な種類があり、病変が末梢にある場合に用いる細径気管支鏡や、リンパ節の観察、生検が行える超音波気管支鏡などを状況に応じて使い分けています。
       検査は通常、局所麻酔を用いて行われるため、大きな痛みはありませんが、喉の違和感や咳反射が生じることがあります。不安や苦痛を和らげるため、鎮静薬を併用する場合もあります。

      ・CTガイド下生検
       コンピュータ断層撮影(CT)を用いて体内の異常部位を正確に把握しながら、肺にある腫瘍や病変から組織を採取する手法です。特に、気管支鏡が届きにくい肺の末梢部や、画像でしか確認できないような小さな病変にも適応されます。

      ・外科的生検
       気管支鏡検査やCTガイド下生検にて上手く組織が採取できなかった場合などに、全身麻酔下で胸腔鏡手術により組織採取を試みる場合があります。

      <画像検査>

      ・CT検査
       レントゲン画像より詳細な情報が得られ、腫瘍の大きさや形、周囲組織への広がりの把握に役立ちます。小さな結節の検出や転移の評価にも欠かせません。手術の可能性が高い場合、血管などの位置関係がより明瞭になる造影CTを撮像することがあります。

      ・PET-CT検査
       がん細胞の活動性を調べる検査で、全身の転移の有無や手術適応の評価に用いられます。

      ・頭部MRI検査
       肺癌は脳へ転移することがあるため、手術・治療計画の際に頭部MRIを行い、脳転移の有無を詳しく評価します。高い分解能によって小さな病変も見逃しにくいのが特徴です。

      【肺癌の進行度(病期診断)と治療】

       T:もとの“がん”の広がり N:リンパ節への広がり M:他の臓器への広がり この3つの情報をもとに、0期からⅣ期までの各ステージに分けられています。0期は上皮内癌といい、癌の浸潤が認められないもっとも早期の癌です。現在肺癌においてはそれぞれのステージがさらに細かく分類されています。肺に腫瘤陰影を認める一般的な肺癌では、IA1期が最も早期で、IVB期がもっとも肺癌が進行した状態となります。
       臨床病期診断による標準的な治療法の概略を次に示します。肺癌に対する治療の主体は、手術、化学療法(抗癌剤による治療)、放射線治療であり、臨床病期や患者さんの状態によりそれぞれの治療単独や組み合わせにより治療がなされます。

        【非小細胞肺癌の治療】

          <外科治療>

           肺癌に対する手術では、これまで肺葉切除が標準術式とされてきました。しかし近年、2 cm以下の小型肺癌に対しては、切除範囲を縮小した肺区域切除や肺部分切除でも良好な治療成績が得られることが、複数の臨床試験により示されています。当院でも、腫瘍の大きさや性状、位置などを十分に検討したうえで、症例に応じて肺区域切除や肺部分切除を積極的に行っています。
           また近年、肺癌に対するさまざまな薬物療法が開発されており、これらを手術の前後(周術期)に使用することで、治療成績が向上することが報告されています。肺癌の病期や癌組織の遺伝子検査などの結果に応じて、これらの薬剤を用いた治療を検討します。
           外科治療の選択にあたっては、肺癌の臨床病期を十分に評価するとともに、呼吸機能や全身状態(心肺機能、肝機能、腎機能、血液凝固能、貧血や併存疾患の有無など)を評価することが重要です。外科治療以外の治療選択肢についても検討したうえで、ご本人、ご家族と十分に相談し、治療方針を決定します。

          ・胸腔鏡下手術(VATS: video-assisted thoracic surgery)
           当院では、約4 cmの皮膚切開と2か所の小さな創(1~2 cm)から内視鏡を用いて手術を行う胸腔鏡下手術(VATS)を、ほぼすべての肺癌手術に導入しています。2018年10月からは、肺癌に対するda Vinci Xiを用いたロボット支援下手術も行っています。また近年では、一部の早期肺癌に対して、さらに低侵襲な単孔式胸腔鏡手術も行っています。この手術では3~4 cm程度の1か所の皮膚切開のみで手術を行うため、術後疼痛の軽減が期待できます。
           術後は早期離床・早期回復を目指し、通常は翌日から食事や歩行を開始します。従来の20 cm以上の皮膚切開を必要とする開胸手術と比較して、胸腔鏡下手術では手術創が小さく、術後疼痛の軽減や入院期間の短縮が期待できます。術後経過が順調であれば、術後1週間程度で退院が可能です。

          ・CTガイド下気管支鏡コイルマーキング
           近年、CTの進歩により、胸部X線写真では指摘することが困難な、すりガラス陰影(Ground-Glass Opacity: GGO)を呈する小型肺癌が発見される機会が増えています。このような病変の中には非浸潤癌や微小浸潤癌が多く含まれ、適切に治療することで非常に良好な予後が期待できます。
           一方、すりガラス病変や小型肺癌は、胸腔鏡で肺の表面を観察するだけでは正確な位置を確認することが難しく、小さな手術創からの触診にも限界があります。そのため、確実に病変を切除するためには、手術前に病変の位置をマーキングすることが重要となります。
           当院では、このような病変に対して、CTガイド下に気管支鏡を用いて腫瘍近傍の気管支に血管塞栓用コイルを留置し、手術中にX線透視でコイルの位置を確認しながら病変を切除する独自の方法を開発し、多くの症例に実施してきました(Toba H, et al. Eur J Cardiothorac Surg. 2013)。本法には、①安全性が高く合併症が少ない、②完全胸腔鏡下でも病変の位置を正確に同定し、十分な切除範囲を確保して切除できる、③複数の病変にも対応できる、といった利点があります。当院では、本法を用いることにより、触診が困難な小型肺癌に対しても確実な位置同定と切除を行い、低侵襲な手術と根治性の両立を目指しています。

          <放射線治療>

           放射線治療は、高エネルギーの放射線を癌細胞に照射することで、癌細胞の増殖を抑えたり死滅させたりする治療です。非小細胞肺癌では、ステージや患者さんの全身状態などに応じて、根治を目的とした治療から症状の緩和を目的とした治療まで、さまざまな場面で放射線治療が行われます。

          ・局所進行期(III期)非小細胞肺癌に対する放射線治療
           III期非小細胞肺癌のうち、病変が胸部にとどまっているものの、腫瘍の広がりなどから手術による切除が難しい場合には、根治を目的とした放射線治療が治療の中心となります。放射線治療単独でも治療は可能ですが、治療効果を高めるため、全身状態や年齢、併存症などから化学療法を併用できる患者さんでは、抗癌剤による化学療法と放射線治療を同じ時期に行う「同時化学放射線療法」が標準治療となります。
           さらに近年では、化学放射線療法を完遂し、病気の進行が認められない患者さんに対して、その後に薬物療法を追加する「地固め療法」が行われます。EGFR遺伝子変異が認められる場合には分子標的治療薬を、その他の患者さんでは適応に応じて免疫チェックポイント阻害薬を使用することで、再発を抑え、治療成績をさらに向上させることが期待できます。このように、現在のIII期非小細胞肺癌では、放射線治療と化学療法、その後の薬物療法を適切に組み合わせることが重要となっています。

          ・早期非小細胞肺癌に対する定位放射線治療
           転移のない5cm以下の非小細胞肺癌で、手術が難しい場合などに行われる治療です。癌の部分に放射線を集中的に照射する治療で、通常の放射線治療よりも1回当たりの放射線量を高くし、少ない回数で治療することで、癌に対して高い治療効果が期待できます。治療の際にはCTなどの画像を使って癌の位置を正確に確認し、周囲の正常な肺や心臓などへの線量をできるだけ少なくします。また、呼吸によって肺や癌が動くことにも対応して照射します。身体への負担が少なく、数回の通院で治療を完了できることが大きな特徴です。一方で、全ての患者さんに適しているわけではなく、癌の大きさや場所、肺の状態などを考慮して適応を判断します。

          ・症状を和らげるための放射線治療(緩和照射)
           放射線治療は、癌を治すことを目的とした治療だけでなく、癌によって生じるさまざまな症状を和らげる目的でも行われます。このような治療を「緩和照射」といいます。例えば、骨転移による痛み、脳転移による神経症状、腫瘍による気道の狭窄や出血などに対して放射線を照射することで、症状の改善が期待できます。緩和照射では、患者さんの状態や治療の目的に応じて照射する放射線量や回数を調整し、できるだけ身体への負担を抑えながら症状を和らげることを目指します。

          ・放射線照射技術の進歩
           放射線治療では、癌に十分な量の放射線を照射する一方で、周囲の正常な肺や食道、心臓などへの照射をできるだけ少なくすることが重要です。従来は、CT画像をもとに腫瘍の形や位置に合わせて複数の方向から放射線を照射する「三次元原体放射線治療(3D-CRT)」が広く行われてきました。近年では、コンピューターを用いて放射線の強さを細かく調節しながら照射する「強度変調放射線治療(IMRT)」など、より精密な放射線治療も行われるようになっています。これらの技術を用いることで、腫瘍に必要な放射線量を照射しながら、正常な肺、食道、心臓などへの放射線量を抑え、副作用を軽減することが期待されます。
           実際にどのような放射線治療が適しているかは、癌の大きさや位置、リンパ節への広がり、呼吸機能、全身状態などによって異なります。当院では、呼吸器内科、呼吸器外科、放射線治療科など複数の診療科が連携し、一人ひとりの患者さんの状態に応じて最適な治療方針を検討しています。

          <内科治療(薬物療法)>

           外科的治療や根治を目的とした放射線治療の適応とならない進行・再発非小細胞肺癌では、薬物療法が治療の中心となります。近年では、分子標的治療薬や免疫チェックポイント阻害薬などの新しい治療薬が次々と開発され、肺癌の治療成績は大きく向上しています(図8、9)。

          ・ドライバー遺伝子以上が認められる場合
           非小細胞肺癌の一部では、癌細胞の増殖や生存に重要な役割を果たす「ドライバー遺伝子異常」が認められます。代表的なものとしてEGFR、ALK、ROS1、BRAF、MET、RET、KRAS、HER2(ERBB2)などの遺伝子異常があり、それぞれの遺伝子異常を標的とした「分子標的治療薬」が開発されています。
           治療の対象となるドライバー遺伝子異常が認められた場合には、多くの場合、それぞれの遺伝子異常に対応した分子標的治療薬を主体とした薬物療法を行います。分子標的治療薬は、特定の遺伝子異常を持つ癌細胞に対して高い治療効果が期待できるため、薬物療法を開始する前に十分な分子診断を行うことが非常に重要です。

          ・ドライバー遺伝子異常が認められない場合
           治療の対象となるドライバー遺伝子異常が認められない場合には、「免疫チェックポイント阻害薬」を主体とした薬物療法が治療の中心となります。免疫チェックポイント阻害薬は、癌細胞によって抑えられていた患者さん自身の免疫の働きを再び活性化させることにより、癌細胞を攻撃する薬剤です。
           治療法を選択する際には、癌細胞におけるPD-L1というタンパク質の発現量などを参考にします。PD-L1の発現状況や癌の組織型、患者さんの状態などに応じて、免疫チェックポイント阻害薬を単独で使用する治療や、免疫チェックポイント阻害薬と従来から用いられてきた殺細胞性抗癌剤を組み合わせる治療などを選択します。

          ・二次治療以降の薬物療法
           最初に行う薬物療法を「一次治療」といいます。一次治療の効果が十分に得られない場合や、一度治療が奏効した後に再び癌が増大した場合には、「二次治療」へと移行します。さらに二次治療後に癌が進行した場合にも、患者さんの状態に応じて三次治療以降の薬物療法を行うことがあります。
           使用する薬剤は、それまでに行った治療の内容や効果、副作用、癌の組織型や遺伝子異常などの分子マーカーに加え、患者さんの年齢、全身状態、併存疾患などを総合的に評価して選択します。このように、現在の非小細胞肺癌に対する薬物療法では、癌の特徴と患者さん一人ひとりの状態に応じて、最適な治療を選択していくことが重要です。

          【小細胞肺癌の治療】

           小細胞肺癌は、非小細胞肺癌と比較して増殖する速度が速く、早期からリンパ節や他の臓器へ転移しやすいという特徴があります。一方で、抗癌剤や放射線治療が効きやすい癌でもあります。小細胞肺癌では、病気の広がりによって「限局型小細胞肺癌」と「進展型小細胞肺癌」に大きく分け、それぞれに適した治療を行います。

          ・限局型小細胞肺癌
           限局型小細胞肺癌は、癌が片側の肺や周囲のリンパ節など、放射線を照射できる範囲にとどまっている状態です。
           リンパ節転移を伴わないごく早期の小細胞肺癌では、外科的切除を行った後に再発を予防する目的で抗癌剤による術後補助化学療法を行うことがあります。しかし、小細胞肺癌は早期からリンパ節や他の臓器へ広がりやすいため、手術の適応となる患者さんの割合は多くありません。
           手術の適応とならない限局型小細胞肺癌では、抗癌剤による化学療法と胸部への放射線治療を組み合わせた「化学放射線療法」が治療の基本となります。全身状態などから実施可能な患者さんでは、化学療法と放射線治療を同じ時期に行う「同時化学放射線療法」を行うことで、根治を目指します。また近年では、化学放射線療法を完遂し、病気の進行が認められない患者さんに対して、免疫チェックポイント阻害薬による「地固め療法」を行うことにより、再発を抑え、治療成績をさらに向上させることが期待されています。
           限局型小細胞肺癌に対する胸部放射線治療では、1回あたりの放射線量を少なくし、1日に2回照射する「加速過分割照射」が標準的な照射方法の一つです。通常より短い期間に集中的に放射線治療を行うことで、治療効果を高めることを目的としています。患者さんの状態や治療環境などによっては、1日1回の照射を行う場合もあります。
           小細胞肺癌は脳に転移しやすいという特徴があります。そのため、初回治療によって非常に良好な治療効果が得られた患者さんでは、画像検査で脳転移が認められていない場合でも、将来の脳転移を予防する目的で脳全体に放射線を照射する「予防的全脳照射(PCI)」を行うことがあります。一方、予防的全脳照射には晩期の副作用として認知機能への影響などが生じる可能性があります。近年ではMRIを用いて脳転移の有無を定期的に確認する方法も選択肢となるため、予防的全脳照射を行うかどうかについては、その効果と副作用を十分に説明し、患者さんとよく相談したうえで決定します。

          ・進展型小細胞肺癌
           進展型小細胞肺癌は、癌が限局型の範囲を超えて広がっている状態です。この場合には、全身に広がった癌細胞に対して治療を行う必要があるため、薬物療法が治療の中心となります。
           全身状態などから治療が可能な患者さんでは、従来から用いられてきた殺細胞性抗癌剤と免疫チェックポイント阻害薬を組み合わせた治療が一次治療の標準となっています。まず両者を併用して治療を行い、一定期間の治療後には、免疫チェックポイント阻害薬を継続する維持療法を行います。
           一次治療後に癌が再び増大した場合には、患者さんの状態や一次治療の効果、治療終了から再発までの期間などを考慮して二次治療を選択します。従来の殺細胞性抗癌剤に加え、近年では癌細胞と免疫を担うT細胞の両方に結合し、T細胞を癌細胞へ誘導して攻撃させる「二重特異性T細胞誘導抗体」が使用できるようになりました。当院でも、適応となる患者さんに対してこのような新しい治療を積極的に行っています。
           このように、小細胞肺癌では病気の広がりや患者さんの全身状態などを総合的に評価し、化学療法、放射線治療、免疫チェックポイント阻害薬、二重特異性T細胞誘導抗体などを適切に組み合わせながら、一人ひとりの患者さんに適した治療を行います。

            【おわりに】

             肺癌の治療では、これまでに説明した標準治療を基本として、癌の組織型や遺伝子異常、病気の広がり、患者さんの全身状態や併存疾患などを総合的に評価し、一人ひとりに適した治療を選択していきます。
             標準的な治療を行った後に癌が進行した場合などには、患者さんの状況に応じて「がん遺伝子パネル検査(CGP検査)」を行うことがあります。CGP検査では、癌に関連する多数の遺伝子を一度に詳しく調べることで、癌細胞が持つ遺伝子異常を明らかにし、新たな治療選択肢がないかを検討します。検査の結果、特定の遺伝子異常に対応する治療薬や、治験・臨床試験などの候補が見つかる場合があります。一方で、CGP検査を行っても実際の治療につながる遺伝子異常が見つからない場合もありますので、検査の適応や実施する時期については、患者さんの病状やそれまでの治療経過などを踏まえて検討します。
             また、当院では肺癌に対する複数の治験・臨床試験を実施しています。治験・臨床試験では、開発中の新しい治療薬や新たな薬剤の組み合わせなど、通常の保険診療ではまだ実施することのできない治療を受けられる場合があります。すべての患者さんが対象となるわけではありませんが、病状やこれまでの治療経過、癌の遺伝子異常などの条件が合致する場合には、標準治療に加えて治験・臨床試験への参加を治療選択肢の一つとしてご提案することがあります。
             肺癌の治療は、分子標的治療薬や免疫療法をはじめとする新しい治療法の登場によって大きく進歩し、治療の選択肢も多様化しています。当院では、最新の医学的知見に基づいた標準治療を基本としながら、必要に応じてCGP検査や治験・臨床試験なども活用し、一人ひとりの患者さんにとってより適した治療を検討していきます。